2007/12/06

第五話「最初で最後の手紙」

離婚・別居子供の気持ち-「別れないで」言えなかった
 
 第五話「最初で最後の手紙」

※今回の話しはなるべく当時の口調に合わせて書いています。


両親は毎晩、私が寝た頃を見計らって、食卓で話し合いをするようになった。でも、いつも夜中まで親の帰りを待っていた宵っ張りの私は、そんな簡単には寝付けない。

毎晩、そーっとドアに耳をあてて、話している内容を盗み聞きしようとした。

廊下を抜き足差し足で歩いていって、ドアが揺れないように静かに耳を押し当てる。これって結構難しいんですよ!

でも声が小さくてよく聞こえない。
父が母に「お前と一緒だったら学校は・・・・」とか言っている台詞が聞こえた。

離婚なのかな、何なのかな。
不安になったけど、でも離婚なんてまだ全然ピンとこない。とにもかくにも、話している内容を探らなくては。

そこで私は食卓のテーブルの裏に、テープレコーダーをセットしてみたりしたが、やっぱりよく聞こえなかった。ただ二人とも低く怖い声でボソボソ話しているだけ。話の内容はわからなかった。

両親が夜中に話し合いをしていると、なんか物凄く不安になってきて、怖くて、やっぱり涙が滲んできちゃう。

ある夜、私はたまらなくなって自分の部屋からペンとメモを持ってきた。

「誰もわるくないよ、だからケンカはやめて」
とそのメモに書いて、二人が話し合っている部屋のドアに押し込んだ。

これまで私は両親に、「仲良くして」とかそんな自分の気持ちを伝えたことは一度もなかったから、このメモを渡すのはすごく勇気がいることだった。
だって自分の気持ちを伝えて拒否されるのが怖かったし、その話題自体を持ち出すのも怖かったから。

でも
押し込んだ時、

ドアが揺れてガタガタ音を立ててしまった。

やばい!
私は音に気づいて親が部屋から出てくると思い、急いで寝室に戻って布団にもぐりこんだ。
だって顔をあわせたら気まずい。(こんな涙でくしゃくしゃの顔を見せるのも嫌だし)

そしたら数分後にお父さんが寝室に入ってきて、「ごめんな」とか何とかって言っていた。緊張していたのであんまり良く覚えていない。

心の中で「やっぱり気持ちを伝えても、ダメだった」とだけ思った。

すぐにお母さんも寝室に戻ってきて、二人とも私を間に挟んで寝た。

私は左手をお父さんの布団の中に入れて、お父さんの手を探した。握ったお父さんの手はすごく大きかった。右手はお母さんの手を握った。お母さんの手はどんなだったか、よく覚えていない。

上を向いて目をつむっていたのに、涙が溢れてくるぐらい大量に出てきて、鼻水もたれてきた。

頭は真っ白で何も考えられなかった。

ただただ、
悲しい、苦しい、胸を押さえつけられるような感情の高ぶりを抑えるのに、精一杯だった。

私の初めての小さな勇気はどれほど伝わったのだろう。
次の日以降も、状況はほとんど変わらなかった。

そして、私はある結論に達する。

***つづく